「特別補償」とは、標準旅行業約款において「第七章 責任」で規定されています。
企画旅行参加中の旅行者が一定の損害を被った場合、旅行業者が所定の補償金、見舞金を支払うことを定めて制度です。
「特別補償規程」学習内容
- 特別補償とは:概要、企画旅行参加中の定義、特別補償と損害賠償
- 身体の傷害:補償金等が支払われない場合、補償金等の種類と支払額、複数の支払事由が重なった場合
- 携行品の傷害:補償金等が支払われない場合、損害補償金の額と適用
「なーんだ、これくらいか」と思ったら大間違い。
結構なボリュームですので、一気読みで覚えずに一つ一つ確認しながら進めていくことをおすすめします。
Contents
特別補償とは
企画旅行参加中の旅行者が生命・身体・手荷物に一定の損害を被った場合に、旅行業者が所定の補償金・見舞金を支払うことを定めた制度を特別補償といい、旅行業者の故意・過失の有無にかかわらず支払われます。
どんなに旅行業者が注意を払ったとしても、特別補償にあたることが生じてしまったら支払わなければならないのは大変ですね。
企画旅行参加中とは
特別補償の対象になるのは「企画参加中の旅行者」で、「最初の旅行サービスの提供開始」から「最後の旅行サービスの提供完了」までの間をいいます。
【原則】旅行サービスの開始・完了
添乗員などから受付や解散の告知が行われる場合は「受付完了時から解散を告げたときまで」で、行われない場合には最初または最後のサービス提供機関の種類によって判断します。
サービス提供機関 | 開始したとき | 完了したとき |
航空機 | 乗客のみが入場できる飛行場構内で手荷物の検査等が完了 | 乗客のみが入用できる飛行場構内からの退場 |
船舶 | 乗船手続きの完了 | 下船 |
鉄道 | 改札の終了 | 改札の終了 |
車両(バスなど) | 乗車 | 降車 |
宿泊機関 | 施設への入場 | 施設からの退場 |
宿泊機関以外の施設 | 施設の利用手続き終了 | 施設のからの退場 |
【例外】旅行サービスの開始・完了
旅行サービスの提供の開始・完了について、例外になるケースは以下のとおりです。
- 旅行者が企画旅行の工程から離脱
- サービスの提供を一切受けない日
- オプショナルツアー
旅行者が企画旅行の行程から離脱
旅行者が企画旅行の工程から離脱する場合、「離脱のスケジュールを旅行業者に届け出たか」「復帰する予定があるか」で取り扱いが異なります。
旅行者が工程から離脱する場合
- 離脱・復帰の予定日時をあらかじめ旅行業者に届け出た→離脱中も企画旅行参加中にする
- 離脱・復帰の予定日時をあらかじめ旅行業者に届け出てない→離脱中は企画旅行参加中にしない
- 復帰の予定なく離脱→離脱した時から後は企画旅行参加中にしない
サービスの提供を一切受けない日
企画旅行日程に旅行業者の手配にかかる運送・宿泊機関などのサービス提供を一切受けない日(無手配日)がある場合、以下の内容が契約書面に明示されているのであれば企画旅行参加中に該当しません。
サービス提供を受けない日がある場合の契約書面に明示すること
- 旅行者が旅行業者の手配によるサービス提供を一切受けない日があること
- 無手配日に生じた事故によって旅行者が被った損害には補償金・見舞金は支払われないこと
無手配日があったとしても契約書面に明示されていなければ特別補償の対象になるので、「うっかり、てへ!」では済まされないということですね。気をつけねば。
オプショナルツアー
企画旅行参加中の旅行者を対象として、同じ旅行業者が別で旅行代金を収受して実施する募集型企画旅行(オプショナルツアー)は、主たる企画旅行契約の内容の一部(=二重の補償は受けられない)として取り扱われます。
用語の説明
オプショナルツアーとは、旅行のフリータイムで希望者が別料金を払って参加する募集型企画旅行の一つです。
特別補償と賠償責任
特別補償の対象となる事由が発生した場合、旅行業者の故意・過失が損失の原因であるならば、補償金・見舞金のほかに損害賠償責任による損害賠償金も支払われなければなりません。
旅行業者が支払う補償金と損害賠償金は、別々で支払うのではなく以下のような調整がされます。
補償金と損害賠償金の調整
補償金<損害賠償金の場合 | 総額(=損害補償金)-補償金=損害賠償金とみなされた額 |
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補償金>損害賠償金の場合 | 総額(=補償金)-損害賠償金=補償金とみなされた額 |
どちらか大きい額が支払う総額となり、あとは引き算で算出していくということですね。
計算自体は簡単ですけれども、あとは出題されたときに解けるかだな。
身体の傷害
企画旅行参加中に旅行者が急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被った場合、旅行業者は旅行者または法定相続人に補償金等を支払います。
補償金等が支払われない場合
以下の場合において、状況次第では補償金が支払われないことがあります。
- 中毒症状
- 免責事由
- 地震・噴火・津波による損害
- 危険な行為による損害
- 反社会的勢力に該当する
中毒症状
中毒症状は種類によって特別補償規程における「傷害」に当たるものと、当たらないものとがあります。
「傷害」に含まれるもの
- 自然毒による中毒症状
- 身体外部から有毒ガス、有毒物質を偶然かつ一時に吸い、吸収、接種したときに急激に生ずる中毒症状
「傷害」に含まれないもの
- 細菌性食物中毒
- 身体外部から有毒ガス、有毒物質を継続的に吸い、吸収、接種したときに急激に生ずる中毒症状
含まれるかどうかは「原因が特定できるか」「偶然かつ一時的か」で決まるようですね。
免責事由
以下の事由によって生じた傷害の場合、旅行業者は補償金等を支払う必要はありません。
免責事由(補償金等を支払わない事由)
- 旅行者の故意
- 死亡補償金を受け取るべき者の故意
- 旅行者の自殺行為・犯罪行為・闘争行為
- 旅行者が無免許運転・飲酒運転をしている間に生じた事故
- 旅行者が故意に法令違反をする、または法令違反するサービス提供を受けている間に生じた事故
- 旅行者の脳疾患・疾病・心神喪失
- 旅行者の妊娠・出産・早産・流産・外科医的手術その他の医療措置
- 旅行者の刑の執行または拘留、入監中に生じた事故
- 戦争・外国の武力行使・革命・政権奪取・内乱・武装反乱その他これらに類似の事変または暴動
- 核燃料物質または核燃料物質によって汚染された物質の放射性・揮発性その他の有毒な特性またはこれらの特性による事故
- ⑨・⑩にともなう事故、これらにともなう秩序の混乱に基づいて生じた事故
- ⑩以外の放射線照射・放射能汚染
- 原因のいかんを問わず、頚部症候群・腰痛で他覚症状がないもの
上記の内容をみると「明らかに旅行者に問題がある」や「非常事態」、「原因が他にある」などで、旅行業者に非が全くない場合は免責になります。
全13項目のうち一つでも補償金を支払わなければなかったら、ほんと「やってられねー!」ってなりそうです。
地震・噴火・津波による損害
国内旅行を目的とする企画旅行で地震・噴火・津波による傷害は、補償金等の支払い対象になりません。
しかし海外旅行の場合は、これらの傷害も補償対象になります。
危険な行為による損害
行為自体に危険が伴うもので生じた傷害は、企画旅行日程に含まれていないのであれば補償金等は支払われません。
危険な行為とされる主なもの
- 山岳登はん(ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山用具を使用するもの)
- リュージュ
- ボブスレー
- スカイダイビング
- ハンググライダー搭乗など
企画旅行の日程に含まれていれば補償金等を支払わなければなりませんが、そんなリスクを背負ってまで企画する旅行業者は強者だと思いました。
反社会的勢力に該当する
旅行者または死亡補償金を受け取るべき人が、以下のいずれかに当てはまると認められた場合には補償金等が支払われないことがあります。
反社会的勢力に該当する場合
- 反社会的勢力に該当する
- 反社会的勢力に資金等を提供し、または便宜を供与する等の関与をしている
- 反社会的勢力を不当に利用している
- その他反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有している
補償金の種類と支払額
補償金等とは以下の4つを指し、条件や支払額を異なります。
- 死亡補償金
- 後遺障害補償金
- 入院見舞金
- 通院見舞金
死亡補償金
死亡補償金の条件と支払額
- 事故の日から180日以内に死亡した場合に支払う
- 死亡補償金の額は旅行者1名につき、国内旅行 1,500万円、海外旅行 2,000万円
死亡補償金は旅行者の法定相続人に支払われます。
後遺障害補償金
後遺障害補償金の条件と支払額
- 事故の日から180日以内に後遺障害が生じた場合に支払う
- 後遺障害補償金の額は、死亡補償金の額の3~100%(後遺障害の程度により異なる)
旅行者が事故の日から180日を超えてもなお治療が必要な場合、旅行業者は事故の日から181日目における医師の判断に基づき後遺障害の程度を認定して後遺障害補償金を支払います。
また同一の事故で複数の後遺障害が生じた場合は以下のとおりです。
複数の後遺障害がある場合
- それぞれの後遺障害補償金の合計額を支払う
- 旅行者1名に対して1企画旅行につき死亡補償金の額が限度
入院見舞金
入院見舞金の条件と支払額
- 平常の業務・生活ができなくなり、かつ入院した場合に支払う
- 入院日数と国内・海外で支払額は異なる
「入院日数」「国内旅行・海外旅行」別の入院見舞金の額は以下のとおりです。
入院日数 | 支払額 国内旅行 | 支払額 海外旅行 |
7日未満 | 2万円 | 4万円 |
7日以上90日未満 | 5万円 | 10万円 |
90日以上180日未満 | 10万円 | 20万円 |
180日以上 | 20万円 | 40万円 |
通院見舞金
入院見舞金の条件と支払額
- 平常の業務・生活に支障が生じ、かつ3日以上通院した場合に支払う
- 通院日数と国内・海外で支払額は異なる
「通院日数」「国内旅行・海外旅行」別の入院見舞金の額は以下のとおりです。
通院日数 | 支払額 国内旅行 | 支払額 海外旅行 |
3日以上7日未満 | 2万円 | 4万円 |
7日以上90日未満 | 5万円 | 10万円 |
90日以上180日未満 | 10万円 | 20万円 |
事故後180日を経過した後 | いかなる場合も支払わない | いかなる場合も支払わない |
複数の支払事由が重なった場合
複数の支払い事由が重なるケースは以下のとおりです。
- 後遺障害補償金が支払われた後に旅行者が死亡した
- 入院見舞金が支払われ後に後遺障害が生じた
- 入院見舞金が支払われた後に通院をした
後遺障害補償金と死亡補償金
後遺障害補償金が支払われた後に旅行者が死亡した場合旅行業者はこれから支払うべき死亡補償金の額から、すでに支払った後遺障害補償金の額を差し引いた残額を旅行者の法定相続人に支払う
特別補償と損害賠償の考え方と同じですね。
死亡補償金>後遺障害補償金で、支払総額は「死亡補償金」ということか。
入院見舞金と後遺障害補償金
入院見舞金(または通院見舞金)が支払い後に後遺障害が生じた(または死亡)場合旅行者1名について、入院・通院見舞金と死亡・後遺障害補償金とを重ねて支払うべき場合、旅行業者はその合計額を支払う
「補償金+補償金」だと高い方の総額で、「見舞金+補償金」だと合計ということか!
たしかに性質が違うものをいっしょくたにするのはおかしい。
では「見舞金+見舞金」の場合はどうなるのか!?気になる方は、さあスクロールを!
入院見舞金と通院見舞金
入院後に通院をした場合
- 入院見舞金と通院見舞金の両方は支払われない
- 旅行者1名について、入院日数・通院日数がそれぞれ1日以上の場合は、①入院日数に対する入院見舞金、②「通院日数+入院日数」を通院日数とみなし、その通院日数に対する通院見舞金のいずれか大きい方
な、なるほどー!納得いくな!
制度の勉強をしている中で設計意図がわかると、追加で学べた気がして嬉しいですよね。
携行品の傷害
企画旅行参加中に旅行者が偶然な事故によって所有する身の回り品(以降「補償対象品」に損害を被った場合、旅行業者は携帯損害補償金(以降「損害補償金」)を支払わなければなりません。
補償金等が支払われないケース
以下の場合において、状況次第では損害補償金が支払われないことがあります。
- 補償の対象にならない物品
- 免責事由
- 地震・噴火・津波による損害
- 反社会的勢力に該当する
「身体の傷害」で補償金が支払われないケースと合わせて覚えていきたいところですね。
補償の対象にならない物品
以下の各物品は補償対象品に含まれず、企画旅行参加中の旅行者が携行していて損害を被ったとしても、損害補償金は支払われません。
補償の対象にならない物品
- 現金、小切手などの有価証券・印紙・切手
- クレジットカード、クーポン券、航空券、パスポート
- 稿本、設計書、図案、帳簿
- 船舶、自動車、原動機付自転車
- 山岳登はん用具、探検用具
- 義歯、義肢、コンタクトレンズ
- 動物および植物
- その他旅行業者があらかじめ指定するもの
免責事由
身体の傷害の場合と同じように携行品の傷害でも免責事由が定められていて、以下の各事由によって生じた損害に対しては損害補償金を支払いません。
免責事由(損害補償金を支払わない事由)
- 旅行者の故意
- 旅行者と世帯を同じくする親族の故意
- 旅行者の自殺行為・犯罪行為・闘争行為
- 旅行者が無免許運転・飲酒運転をしている間に生じた事故
- 旅行者が故意に法令違反をする、または法令違反するサービス提供を受けている間に生じた事故
- 差押え、取り立て、没収、破壊など国または公共団体の公権力の行使
- 補償対象品の瑕疵
- 補償対象品の自然消耗、さび、かび、変色、ねずみ・虫食い等
- 単なる外観の損傷であって補償対象品の機能に支障をきたさない損害
- 補償対象品である液体の流出
- 補償対象品の置き忘れまたは紛失
- 戦争、確認燃料物質などの爆発・照射等による損害
・・・旅行中に差押えとかあったら驚きますね。
置き忘れや紛失は免責事由であるものの、「落として壊した」「盗難に遭った」は補償対象になることに注意!
免責事由の中でも特に⑨~⑪に該当するもので、あてはまるかどうかが問題に出されるようです。
その他
- 地震・噴火・津波による損害
- 反社会的勢力に該当する
上記については身体の傷害と同じですので、そちらをご参照ください。
損害補償金の額と適用
補償対象品に損害が生じたとしても支払われる額は決まっていて、全額が補償されるわけではありません。損害補償金の限度額や適用方法などは以下のとおりです。
損害補償金の限度額
旅行者1名に対し1企画旅行につき15万円
免責額
旅行者1名に対し1事故につき、損害額が3,000円を超えない場合は損害補償金を支払わない
損害額の基準
損害額は、①時価または②修繕費+損害防止軽減費用+損害賠償請求の手続き費用のいずれか低いほうを基準とする
高額品の算定
補償対象品の1個(1対)の損害額が10万円を超えるとき、旅行業者は損害の額を10万円とみなす
保険契約がある場合
旅行者が任意で旅行傷害保険に加入している場合、保険金が支払われたのであれば損害補償金の額を減額
旅行傷害保険に加入していた場合、身体・生命の傷害は保険契約があったとしても補償金が減額することはありませんが、携行品は二重に補填されないことになっています。
確認テストしました!
結果は・・・7問中7問正解!よーし、よしよし。悪くない。
悩んだところは、企画旅行参加中に生命・侵害または手荷物に被った損害について、「旅行業者の責任が生ずるか否かを問わない」という箇所です。
それと支払い対象とならない中毒症状、支払い対象とならない携行品も覚えていかないと・・・
まとめ
- 特別補償は企画旅行参加中に旅行者が被った一定の損害が対象となり、開始・完了はサービス提供機関による
- 生命・身体の傷害には補償金等の種類が4つあって支払額と条件が異なり、複数の支払いが発生したときの金額に注意
- 手荷物だと免責事由の他に補償の対象とならない物品もあり、保険契約に加入している場合に携行品は二重で補填されない
かなりボリュームがある内容でしたが、なんとか終わりました。
ポイントとしては「企画旅行参加中の状態」「身体の傷害について支払われないケースと支払額」「携行品について支払われないケースと支払額」です。
一気に全ては覚えられませんが、一つ一つ着実に。13項目の免責事由はまだまだかな。
今回の旅先 「兵庫県 朝来市」
兵庫県朝来市に何があるのか?それは日本のマチュピチュと呼ばれる「竹田城」。
小さい頃からマチュピチュに憧れていた私にとって、日本で見られるのなら・・・と入社してすぐに向かいました。
たしか姫路から始発の電車に乗っていったんだよなあ。懐かしい。
雲海が見たくて早起きをしたのですが、ありがたいことに晴天で雲一つない!日頃の行い!
欲をいえば雲に浮かぶ城をみてみたかったけれども、清々しい朝に自然の中にいるのもいいものですよ。あと山城な!あとから良さがわかる!