中小企業診断士

【独学者向け】中小企業診断士 二次試験|事例Ⅳ「経営分析の解き方」

中小企業診断士二次試験の事例Ⅳで必ずといっていいほど出題される「経営分析」。

25点の配点は高く正解できていれば、事例Ⅳの合格ラインを超える確率も上がるでしょう。

 

  • 経営分析の問題を解く上で意識すること
  • 財務指標の公式確認と選び方
  • 選んだ財務指標と与件文を組み合わせた記述の仕方

 

この前の二次試験で見事に経営分析から失敗した筆者が、試験問題を解き直し、テキストを見直す中で学んだ内容をまとめています。

実際に失敗した内容やテキストで書かれいることなど、勉強中の方には役に立つ内容ですのでぜひご覧ください。

 

経営分析の問題を解く上で意識すること

経営分析の問題を解く上での課題

今年の試験は時間がまだあるので、過去問だけでなくテキストも購入し腰を据えて勉強していこうという考えです。

 

また昨年に過去問を解きまくって、課題だと感じたことが2つあります。

 

経営分析の問題を解く上での課題

  • 財務指標の選び方
  • 選んだ財務指標と与件文を組み合わせた記述の仕方

 

おそらく同じような壁にぶつかっている人も多いのではないでしょうか。

 

上記の課題をしっかりと考えて、どう克服していくのかを意識して問題演習をしていかなければなりません。

 

これから私が上記の課題を感じた経緯と、テキストと過去問を解く中でまとめたことを紹介していきます。

 

前年の試験では経営分析から失敗

私が中小企業診断士試験を受けたのは2019年度で、1次試験の合格発表の後から1ヶ月間勉強して2次試験に臨みました。

 

そして見事に第1問の「経営分析」から失敗したのです。

 

第1問 経営分析(配点25点)の結果

(設問1の内容)

前期と比較した場合の財務指標のうち、①悪化していると思われるものを2つ、②改善していると思われるものを1つ取り上げて、名称と財務諸表の値を答えよ。

 

いくつかの解答速報より答え合わせをすると、3つ中2つの財務指標が違っていることが判明。
特に与件文にも書かれている「棚卸資産」に関する指標を入れてなかったのは大きい。

 

(設問2の内容)

当期の財政状態および経営成績について、前期と比較した場合の特徴を50字以内で述べよ。

 

設問1の時点で取り上げている財務指標がずれているので、満点ということはありえなく減点対象となっているでしょう。

 

過去問では得点源であった経営分析を本番では半分も取れなかったというのは大打撃で、事例Ⅳが得意科目だと思っていた私にとってはショックでした。

 

過去問を解きまくって試験に臨んだ感想

私がどのような勉強をして事例Ⅳが散々な結果になってしまったかというと、「勉強方針も立てず、ただ過去問を解いていただけ」だったからです。

 

二次試験の勉強は合格が決まってからだったので1ヶ月しかなく、どう勉強したらいいのか調べることもせずに黙々と過去問を解いていました。

 

たしかに10年分の過去問を解いて解き方やパターンというものもわかるようになり、回を重ねるごとに点数も上がったのですが、本番で失敗したということは力がついていなかったのだと実感します。

 

今は解き方やパターンだけでなく、財務指標の意味や解答に至るまでの思考プロセスを見直さなければならないという考えです。

 

という経緯があり再チャレンジである今年の試験に向けて、「財務指標の選び方」と「記述の仕方」を意識していこうと思いました。

 

経営指標の公式確認と選び方

収益性・効率性・安全性の主な財務指標の公式と、どのような考え方で選んでいくかをまとめました。

赤色の財務指標は最低限覚えておくものです。

 

収益性指標

収益性とは会社が利益を上げる能力を表していて、売上に対してどれだけ利益が出ているか、利益を圧迫している費用は何かなどを表す指標があります。

 

指標の名称 算出式
売上高総利益率 (売上総利益÷売上高)×100(%)
売上高営業利益率 (営業利益÷売上高)×100(%)
売上高経常利益率 (経常利益÷売上高)×100(%)
売上高当期利益率 (当期利益÷売上高)×100(%)
売上高売上原価率 (売上原価÷売上高)×100(%)
売上高販管費比率 (販管費÷売上高)×100(%)

 

二次試験の問題を解いていると、主に取り上げられるのは「売上高利益率」の中で特に変動した指標や、与件文から問題だと考える費用における指標です。

 

効率性指標

効率的な経営とは資金面での無駄をできるだけ減らして経営を行うことで、具体的には売上高に対してどれくらいの資産や負債があるのかを示す回転率(または回転期間)で表されます。

 

指標の名称 算出式
総資本回転率 売上高÷総資本(回)
売上債権回転率 売上高÷売上債権(回)
棚卸資産回転率 売上高÷棚卸資産(回)
固定資産回転率 売上高÷固定資産(回)
有形固定資産回転率 売上高÷有形固定資産(回)

 

単年度では大きく変動しない「総資本回転率」が取り上げられることは少なく、債権回収の効率性を示す売上債権回転率や、設備の効率性を示す有形固定資産回転率が主な指標です。

 

2019年度の経営分析では棚卸資産の改善がテーマとなった与件文だったこともあり、「棚卸資産回転率」が答えの一つでした。

 

安全性指標

調達した資金を表す負債と純資産の構成が安定しているほど安全性は高く、短期・長期の視点で資金面に余裕があるのかを示しています。

 

指標の名称 算出式
自己資本比率 (純資産÷総資本)×100(%)
負債比率 (負債÷純資産)×100(%)
固定比率 (固定資産÷純資産)×100(%)
固定長期適合比率 {固定資産÷(純資産+固定負債)}×100(%)
流動比率 (流動資産÷流動負債)×100(%)
当座比率 (当座資産÷流動負債)×100(%)

 

当座資産=現金・預金+受取手形・売掛金+有価証券

 

「すべては自己資本比率だ!」と勝手に思っていましたが、運転資金の減少であれば流動比率、長期借入金の増加であれば負債比率と与件文に書かれている内容によっても選ぶ指標は変わってきます。

 

どのように財務指標を選んでいくか

数ある指標からどれを選ぶか、または計算するかを見極めるポイントは2つです。

 

財務指標の選び方

  • 比較対象との差が特に大きい指標はどれか
  • 与件文に書かれている内容と関連しているか

 

比較対象との差が大きい指標を選ぶ

主に経営分析では前年か他社と経営指標を比較して、原因を見つけるという問題となっています。

 

収益性・効率性・安全性の経営指標を計算して、「営業利益率か経常利益率」や「固定資産回転率か有形固定資産回転率」と悩む場面もありますよね。

 

そんなときは比較対象との差がより大きい指標の方が選ぶのが重要です。

 

与件文に関係している指標を選ぶ

与件文に書かれていることが解答者に与えられている情報であるので、どう与えられた情報と結び付けて財務指標を選ぶかということも大切です。

 

前年度の私にあてはまるように、「比較対象との差が大きい指標を見つけなければ」と必死になって計算をした結果、「棚卸資産」という与件文のテーマに沿うことができませんでした。

 

与件文から定性的な情報を読み取り、どう財務指標で定量的に分析していくのかということが、記述問題にも結びついていくのだと考えます。

 

選んだ財務指標と与件文を組み合わせた記述の仕方

計算した財務指標を見比べたり、与件文を読み取ったりすることで、問題で取り上げられている会社の全体像がつかめてきました。

 

しかし次に壁となるのは「どう記述したらいいのか?」ではありませんか?
仕事で書くことに慣れている人はすんなりと解けるかもしれませんが、文章が苦手な私にはむつかしかったです。

 

そんな状況から始まって過去問10年分、本試験1回、事例Ⅳのテキストを解き、今では2つのことを意識しています。

 

経営分析における記述の仕方

  • 聞かれたことに答えているか
  • 「原因=与件文」「結果=財務指標」の説明ができているか

 

上記のポイントは過去問の解説や問題集でも書かれていて何度も見ているのですが、いざ解き始めてみると定着化していないと実感します。
こればっかりは、何度も何度も意識して取り組むしかないのですね。

 

聞かれていることに答えているか

私のように書き始めから悩んでしまう方は、まず形式的にでも「聞かれたことに答える」ことを意識しましょう。

 

聞かれたことに答えるというのは、「原因は何か」と聞かれているのであれば「原因は~である」「~が原因である」で、「経営状況はどうなっているか」なら「収益性は~」「効率性は~」「安全性は~」ということです。

 

読み手である採点者に対してはもちろんのこと、もし自分がお客様に説明しているとイメージしてみても、「聞かれたことに答えている」という姿勢を示すことは必要ですよね。

 

私は「早く考えを書きたい!」と思いのままペンを走らせてしまい、結局のところ何を言いたいかわからない文章になってしまうことがよくありました。形式は大切です。

 

「原因=与件文」「結果=経営指標」の説明ができているか

財務指標というのは貸借対照表と損益計算書という「結果」から導きだされた数値であり、結果だけ示されても改善することできませんよね。

 

記述問題でも「前年に比べて売上高経常利益率が低下した」「流動比率が上昇して安全性が高まった」だけでは不十分で、その原因を「与件文から探す」ということが重要なのです。

 

与件文にある事業的・定性的な「原因」と財務諸表から分析した「結果」の「因果」を意識すると、説得力のある文章になって・・・いるはず!

 

与件にある事実を根拠として説明していると示すために、なるべく与件文の表現通りに書いています。

 

まとめ

事例Ⅳ 経営分析の解き方
  • ただ過去問を解くだけでなく指標の選び方や記述の仕方を意識すべき
  • 財務指標を選ぶポイントは「比較対象と差が大きい」と「与件文と関連のある指標か」
  • 記述問題では「聞かれたことに答える」「与件文=事実、財務指標=結果を説明」を出来ているか

 

解き始めた頃は全く手ごたえがなく、なんとなく答えを書いているという感じでした。

 

しっかりと理解しているとは言えない状況で試験に臨んだ結果、曖昧な部分で点数を落としたのは反省すべき点です。

 

次こそは高い確率で出題される「経営分析」をマスターし、事例Ⅳで高得点を目指していきましょう!

 

ちなみに事例Ⅳ「経営分析」の勉強に使ったテキストは以下の2つです。

 

 

1つの問題が10~20分で解けるので、毎日1~3問のペースで進めています。
無理なく進められますし、解き方のポイントもわかりやすいのでおすすめです。

 

 

会計事務所で働いていたときに購入した一冊。
人によっては文章が堅いと感じるかもしれませんが、経営指標の説明も一つ一つしっかりしていることに加え、ケーススタディも多いので二次試験のお供にしようと考えています。

 

それでは引き続き、頑張っていきましょう!